院長ブログ・整形外科コラム

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整形外科コラム

2022年12月10日

腰痛の患者さんの危険信号とは?

腰痛の患者さんで見逃してはいけない危険信号 (red flags)が「腰痛診療ガイドライン2019」に記載されています。

今日はそれを紹介したいと思います。

 

http://ssheffordosteo.com/condition/lumbago-lower-back-painより掲載

 

腰痛の患者さんは日本全国に2800万人いるとされています。

整形外科での日常診療では腰痛の患者さんが多く来院されています。

その中でも腰の痛みを訴えた患者さんが来院された時に見逃してはいけない疾患があります。

具体的には骨折、悪性腫瘍、感染、解離性大動脈瘤などです。

では腰痛の患者さんでどのような症状があれば気を付けないといけないのでしょうか?

 

「腰痛診療ガイドライン2019」では腰痛の患者さんで見逃してはいけないred flags (危険信号)が紹介されています。

 

重篤な脊椎疾患(腫瘍、感染、骨折など)の合併を疑うべきred flags (危険信号)

  • 発症年齢<20歳または>55歳
  • 時間は活動性に関係のない腰痛
  • 胸部痛
  • 癌、ステロイド治療、HIV感染の既往
  • 栄養不良
  • 体重減少
  • 広範囲に及ぶ神経症状
  • 構築性脊柱変形
  • 発熱

整形外科を受診された腰痛の患者さんは医師によって上記項目に合致した症状がないかどうか確認されています。

では見逃してはいけない疾患のいくつかを紹介したいと思います。

 

腰椎圧迫骨折

腰痛で見逃してはいけない疾患のうち最も多いのは腰椎の圧迫骨折です。

 

https://www.goodmancampbell.com/conditions/spine/trauma/traumatic-spine-fracture/より転載

 

腰椎圧迫骨折は強い痛みを生じます。

寝返りや起き上がったときに痛みが強くなることが多いですが、痛みを全く感じない方もおられます。

軽微な外傷で骨折が生じた場合には、背景に骨粗鬆症などの疾患がないかどうか調べます。

 

転移性脊椎腫瘍(がんの脊椎転移)

乳がん、腎臓がん、肺がんなどのがんの腫瘍細胞が血管内に侵入し、血流にのって脊椎に転移することがあります。

その後、脊椎内でがん細胞が増殖し、骨折を引き起こすことがあります。

 

https://www.spine-health.com/conditions/spinal-tumor/metastatic-spine-tumorsより転載。

 

がんの脊椎転移による腰痛は徐々に痛みが悪化してきます。

がんの既往歴があり、痛みが徐々に悪化する場合は脊椎転移の可能性を考えながら診療しています。

 

化膿性脊椎炎・脊椎カリエス

感染は、化膿性脊椎炎といいます。黄色ブドウ球菌という細菌が原因になることが多いです。

また、原因となる菌が結核の場合は脊椎カリエスと言います。

糖尿病や透析している方、がんの治療を行っている方で免疫力が低下している方に生じます。

感染によって脊椎の痛みが生じたり、脊椎が破壊され麻痺が生じることがあります。

糖尿病の患者さんで透析をしていて発熱を伴う腰痛があった場合は特に要注意です。

 

https://www.carolinaspaincenter.com/causes-of-severe-low-back-pain/より転載。

 

急性大動脈解離

急性大動脈解離も腰痛を生じることがあります。

急性大動脈解離は大動脈の内壁に亀裂が生じそこから血管壁の中に血液が流入し血管がどんどん避けてしまう状態を言います。

過去に経験したことのないような痛みと表現されることが多いほど強い痛みを伴います。

急性大動脈解離は適切な治療を受けなければ突然死の原因となる疾患です。

しっかりと鑑別することが重要です。

 

 

 

危険信号を示す腰痛の患者さんの数は多くはありませんが、見逃してはいけない症状です。

特に、上記に加えて長期にわたって腰痛が生じていて一度も整形外科を受診していない方は是非一度整形外科を受診しましょう。

大阪大学整形外科勤務していたときには多くの転移性骨腫瘍(がんの脊椎転移)の方を担当しましたが、その中には耐え難い腰痛が長期間持続していたにもかかわらず医療機関を受診されていない方もおられました。

いつもと違う腰痛がある方はとにかく整形外科を受診し、予期せぬ疾患がないかどうか調べてもらいましょう。

 



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