院長ブログ・整形外科コラム

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整形外科コラム

2023年10月1日

脂肪からできた「腫瘍」はご存知でしょうか?

脂肪腫は脂肪細胞で構成される良性の腫瘍です。

 

脂肪腫にもいくつかの種類がありますが今回は代表的な通常型の脂肪腫(Conventional lipoma)について私が思うことを記載したいと思います。

一般的によく見られる脂肪腫は腫瘍の発生部位によって皮下脂肪から生じた浅在性の脂肪腫と筋膜下や筋肉内、筋肉間から生じた深在性の脂肪腫に分けられます。

通常は生命にかかわることはありません。

 

ではどのように診断するのでしょうか?

健康診断で脂肪腫の有無を調べることは通常はしていないので大部分の患者さんがいつの間にか「しこり」が出来ていることを感じて病院を受診します。

 

 

Burusapat C, et al. Atypical Lipomatous Tumor/Well-Differentiated Liposarcoma with Intramuscular Lipoma-Like Component of the Thigh. Case Rep Surg. 2020 Dec 12;2020:8846932. doi: 10.1155/2020/8846932. PMID: 33414978; PMCID: PMC7752295.より転載。

 

脂肪の塊は大きな場合は上の写真のような感じ(両側大腿部の腫瘤)で来院される方が多いです。

受診後はエコーやMRIなどの検査を施行して脂肪腫と診断します。

 

触診だけ、つまり触っただけで脂肪腫と判断することは通常はあまりしません。

とくに5㎝を超える腫瘍の場合は検査をお勧めします。

町のお医者さんで触っただけで脂肪腫と診断された後に、実は悪性だったという患者さんを何人も経験しています。

 

ちなみに、レントゲンでも大きな脂肪腫の場合はある程度診断可能です。

 

 

https://www.indianradiology.com/2017/06/intramuscular-lipoma-plain-xray.html より転載。

 

上記のレントゲン写真は左前腕のレントゲン像です。

矢印のように脂肪のかたまりの部分は透過性が亢進して、つまりレントゲン上は黒くうつります。

そのため大きな腫瘍の塊があってレントゲンを撮影してこのように腫瘍が黒くうつる画像であれば脂肪性の腫瘍だなあと考えます。

 

皮下の脂肪腫(皮膚のすぐ直下の皮下脂肪内に生じた腫瘍)ではどのように画像では見えるでしょうか?

 

 

 

上のMRは右胸壁の皮下にできた脂肪腫です。

黄色の矢印の部分が皮下の脂肪腫になります。

正常の脂肪と脂肪腫の境界がはっきりしないこともあります。

 

通常は気にならなければ経過観察することが多いです。

気になる場合、大きさが徐々に大きくなっている場合や神経に接していて痛みがある場合などは手術することもあります。

 

では筋肉内から生じた脂肪腫(皮下脂肪より体の深部から発生)はどのように見えるでしょうか?

 

 

右大腿部の筋肉内に生じた筋肉内脂肪腫の患者さんの画像です。

身体の下から見た画像です。

筋肉内に生じている白い部分が脂肪腫です。

 

 

同じ腫瘍を前から見た画像になります。

円形のころっとした白い塊が脂肪腫です。

 

このように筋肉の中に出来る脂肪腫も同じように皮下脂肪と同じように見えます。

筋肉内に生じた脂肪腫は10㎝以上の大きさになって初めて気づくこともあります。

大きい腫瘍は大腿部に生じることが多いので、患者さんの中には「片方の太ももだけ筋肉がついてきたと思っていました」とおっしゃられる方もいます。

徐々に大きくなることが多く、日常生活を送る際にもそれほど違和感が生じないようです。

 

筋肉内の脂肪腫は本当に筋肉内の脂肪腫(良性)かどうか、画像だけでは判断が難しいこともあります。

脂肪から生じた悪性腫瘍を脂肪肉腫と呼びますが、筋肉内に生じている脂肪の塊は脂肪肉腫のこともあります

(脂肪肉腫にもいくつか種類がありますが今回は代表的な高分化型脂肪肉腫の紹介です)。

 

 

このMRIは左大腿部の内側の筋肉の中に生じた脂肪の腫瘍です。

身体を前から見た画像です。

 

 

この画像は身体の下から見た画像になります。

良性の脂肪腫と同じように見えますが、悪性の脂肪腫になります。

最終的な診断は腫瘍を摘出してその腫瘍の細胞を病理の先生に診てもらって診断が確定します。

 

少なくとも5㎝以上の大きさで画像検査上、悪性を否定できない脂肪の塊であった場合にはぜひ専門医の受診をお勧めします。

脂肪腫(良性)と思って切除してみたら脂肪肉腫(悪性)でした、と術後に紹介される患者さんが結構多いです。

画像診断が微妙な場合はぜひ骨軟部腫瘍の専門医あるいは専門施設(日本整形学会のホームページからも検索できます)の受診をお勧めします。



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