2022年7月2日
こんにちは。
今回はこれまで私が大学病院などの専門施設で治療をしていた領域(骨軟部腫瘍領域:骨や筋肉などに出来るしこり)から代表的な疾患を紹介します。
最近では多くの病気がインターネットで検索するとその詳細が詳しく記述されている記事が出てきますが比較的稀な疾患の場合、それほど記事は多くありません。たまたま整形外科で「非骨化性線維腫・線維性骨皮質欠損」と診断されたがよく意味がわからなかったという方に参考になればと思いこの疾患について簡単に記載してみます。
大学病院の外来は、特に年齢制限をしていないため(当たり前ですが)子供からお年寄りまで幅広い年齢層の患者さんが紹介されて受診されます。その中でも中学生までの患者さんで紹介されてくることが多い疾患の一つに「非骨化性線維腫/線維性骨皮質欠損」があります。
ほとんどの患者さんはこの病気で自覚症状はありません。たまたま膝を怪我して整形外科を受診しレントゲン撮影を行ったところ偶然骨に影が見つかって専門病院に受診しましょうということが多いです。原因ははっきりしていません。非骨化性線維腫は骨皮質(骨の殻に当たります)から骨髄内(骨の内部)に広がる病変を言うことが多く(図1)、一方、骨皮質を中心に病変が広がり、靭帯、腱の付着部に生じた病変を線維性骨皮質欠損と呼んでいます(図2)。ほとんどの患者さんではわざわざ組織の一部を採取する生検は不要で画像検査で診断します。
8年の経過で大腿骨遠位の病変は自然に縮小しています。
好発年齢は10歳代、好発部位は膝関節の周囲の骨に多くみられます。20歳以上で診断されることはまれです。30歳以上で診断されることはないので自然経過で消えていくと考えられています。
自覚症状は前述したようにほとんどありません。非常に稀ですが病変が大きくなったときに骨折を生じることがあります。骨折が生じる可能性が高い場合には予防的に手術も検討します。骨折が生じる可能性が高くない場合は基本的には経過観察です。
私が大学病院で診療していた時には、最初の1年は年3回(春休み、夏休み、冬休み)、レントゲン上大きさが増大傾向を示さない場合は年に1回程度経過観察していました。骨の成長が終了する高校生以降には病変が縮小傾向を示すことが多いので縮小傾向を示した時には外来経過観察を終了にしていました。
骨折を生じる可能性がある場合以外は特に心配するような疾患ではないため、「非骨化性線維腫/線維性骨皮質欠損」は思春期のニキビのような感じと思っていただいてもいいかと思います。