2022年9月21日
こんにちは。
指を物にぶつけたり、ドアで挟んだり、包丁で切ったりしてけがしてしまうことがありますよね。
大部分のけがは骨が折れていない限りは数週間以内に治ります。
骨折でも最初は腫脹と痛みが強いですが徐々に改善してきます。
ところが、非常に稀ですがそのけがが誘因となって指先にがんの転移が生じることが知られています(一部の専門医の間で、ですが)。
ちなみに、一般的にはがんが手に転移するというのは非常に稀です。
肘から手の指あるいは膝から足の指まで、つまり手足の先端の部分への転移はacrometastasisと呼ばれています。
Acroは四肢の、metastasisは転移という意味です。
四肢の先端部への骨の転移(Acrometastasis)は全骨転移の約0.1%(1)と言われています。
では毎年何人くらいの方が指にがんが転移するのでしょうか?
日本全体で毎年がんになる患者さんは約100万人です。
骨に転移を生じる患者さんの数ははっきりとした統計がないので不明ですが、毎年10万人は超えていると言われています。
例えば、毎年10万人にがんの骨への転移が生じるとすれば、そのうちの0.1%、100人にacrometastasisが生じていることになります。
さらに四肢の先端部への骨転移(acrometastasis)を生じる患者さんのうちの10%は指への転移巣ががんの初発症状だそうです(3)。
1年間に骨に転移が出現した患者さんの数を10万人と仮定した場合、日本全国で毎年10人くらいは指の病変ががんの初発症状になっているということになります。
指のレントゲン像です。(2)より引用。薬指の末節骨が溶けていて消失しています。
利き手(反対側の指と比較して2倍の発生頻度)の指(手の中でも指が最も多い)をけがした後に肺がん(肺がんが最も多い)が転移した(2)、という流れが一番多いようです(繰り返しますが多いと言ってもかなり稀です)。
けがをした指に血液の流れが多くなり、その血液内にがん細胞も一緒に流れてきて指の先端部でたまたま生着したと考えられています。
日常の診療では、指の痛みを主訴に病院を受診し指のレントゲンを撮影することはよくあります。
通常、指の骨が溶けている場合は、骨髄炎(骨の感染)や内軟骨腫という良性の腫瘍のことが多く、ある程度臨床症状と画像検査で診断可能です。
しかしながら、指の痛みが徐々に進行し、さらに指先の腫れも伴うようになり、よく見る病気のレントゲン像とは異なる場合は要注意です。
指先の外傷後に痛みが続く場合はぜひ整形外科を受診してください。
特にがんの既往のある方はレントゲンチェックをしましょう。