2023年8月22日
2016年4月から小学校・中学校・高等学校・高等専門学校の全学年において、年に1回行われている学校における健康診断に「運動器検診」の項目が組み込まれて調査されるようになりました。
子供たちの運動器の障害では「使い過ぎ」「練習し過ぎ」などのやり過ぎによる障害と、運動をしないことによる運動器の変化(運動器機能不全)の二極化が問題となっています。
そこで、検診では「やり過ぎによる障害」と「動いていないことによる機能不全」をチェックします。
では、運動器の検診ではどのようなことが行われているのでしょうか?
・背骨が曲がっている。
・腰を曲げたり、反らしたりすると痛みがある。
・上肢に痛みや動きの悪いところがある。
・膝に痛みや動きの悪いところがある。
・片脚立ちが5秒以上できない。
・しゃがみ込みができない。
の有無を確認します。
どのような疾患を念頭に検診を行うのでしょうか?
脊椎(せぼね):脊椎側弯症、脊椎分離症、
上肢 :野球肘、野球肩、
股関節・下肢 :ペルテス病、大腿骨頭すべり症、発育性股関節形成不全(先天性股関節脱臼)、オスグッド・シュラッター病
などの疾患を念頭において検診します。
上記疾患のスクリーニングとは別に「運動しない子供」・「運動できない子供」かどうかもチェックします。
検診で行う「片脚立ち5秒」「しゃがみ込み」「肩挙上」「体前屈」は何を評価しているのでしょうか?
「片脚立ち5秒」は身体のバランス
「しゃがみ込み」は下肢の柔軟性
「肩挙上」は上肢の柔軟性
「体前屈」は体幹の柔軟性
を見ています。
これらの項目をできない場合にはその原因としては、
①「運動しないために体が固い・バランスが悪い」
②「運動できない/運動しない」、つまり運動した後で体が痛くなるなどの症状が出るため、運動をしないようにしている
のいずれかが考えられます。
②の場合は、整形外科で何らかの疾患が隠れていないかを精査することになります。
①の場合は、「子供ロコモ」とも呼ばれています。
外で遊ぶ機会が減っていることなど身体を動かしていないことが原因で「身体のバランス」、「下肢の柔軟性」、「上肢の柔軟性」、「体幹の柔軟性」が低下している状態です。
本来「ロコモティブシンドローム(ロコモ)」は中高齢者が運動器の障害によって移動能力が低下した状態のことを言います。
では、「子供のロコモ」はどういう問題が生じるのでしょうか?
身体のバランス、柔軟性低下は、怪我をしやすくなります。
また運動不足は骨の成長にも影響します。
骨の強度は通常は20歳前後がピークです。
子どものときにしっかり運動することで、その最大骨量をできる限り増やすことができます。
反対に、運動不足では骨の強度は低くなり、中高年になったときに骨粗鬆症になる可能性が高くなります。
当院では「子供のロコモ」を改善するために理学療法士と共に身体の改善に取り組んでいます。
「身体のバランス」や「柔軟性」の低下が気になる方はぜひ全国ストップ・ザ・ロコモ協議会のホームページ (https://sloc.or.jp/) も参考にしてください。