2023年8月14日
高齢者に多い「大腿骨近位部骨折」の発生率が、兵庫県では男女ともに全国平均と比較して高いのをご存知でしょうか?
2015年に人口10万人あたりの大腿骨近位部骨折の発生率を都道府県別に調べた結果(図1)、全国平均を100とすると、女性の場合、兵庫は全国1位の120でした。
一方、男性では兵庫は121で全国5位でした1)、2)。
別の論文になりますが2017年のデーターで解析した結果でも全国平均を1とすると近畿地方は男性は1.3、女性は1.23と全国平均よりも高い値でした(図2)3)。
図2 2017年における大腿骨近位部骨折の発生率
上記二つの論文とは別にひょうご震災禁煙21世紀研究機構の研究1)による2012年から2016年の5年間に兵庫県で生じた大腿骨近位部骨折に関する研究報告書が公開されています。
そこでは兵庫県を10区域に分けており、川西市は阪神北になります。
図3 兵庫県圏域別大腿骨骨折発生率
図4 兵庫県圏域別大腿骨骨折発生率 2012~2016
図3に示すように阪神北の大腿骨近位部骨折の発生率は、男性は99.6、女性は112.2でした。
女性は兵庫県の中でも阪神北は最も大腿骨近位部骨折の発生率が高いことになります(図4)。
以上をまとめると、
2015年のデーターでは兵庫県は、大腿骨近位部骨折の発生率は女性は全国で1位でした。
2012~2016年のデーターでは阪神北は、女性の大腿骨近位部骨折の発生率は兵庫県の中では最も高い値でした。
2017年のデーターでも全国平均を1とすると近畿地方は女性は1.23と全国で最も高い値でした。
このように川西市は、さまざまの報告から女性は全国でも有数の大腿骨近位部骨折の発生率が高い地域であることが分かります。
原因についてははっきりとわかっていませんが、兵庫県内の解析では、神戸・阪神は、女性で「痩せが多い」「肥満が少ない」「喫煙者が多い」、男女とも「タンパク質エネルギー比低値が多い」「ビタミンD不足が多い」1)のでこれらの因子が大腿骨近位部骨折に関与している可能性が指摘されています。
骨折は突然やってきます。
日頃から転倒しないようにすることも重要ですが、転倒しても折れない骨にすることも重要です。
高齢になっても大腿骨近位部骨折の痛みは大変つらいものです。
「高齢だから骨折が生じても仕方がない」、では簡単に片付けられないほど痛みは強いです。
転倒しても骨折しない「骨」となるように、日ごろの生活習慣を一度考えてみるのも重要です。
1)健康寿命の延伸に向けた効果的な方策の検討 ―大腿骨近位部骨折と生活習慣の相関関係の分析 2021年3月 公益財団法人 ひょうご震災禁煙21世紀研究機構
2) Tamaki J, et al. Working Group of Japan Osteoporosis Foundation. Estimates of hip fracture incidence in Japan using the National Health Insurance Claim Database in 2012-2015. Osteoporos Int. 2019
3) Takusari E, et al. Trends in Hip Fracture Incidence in Japan: Estimates Based on Nationwide Hip Fracture Surveys From 1992 to 2017. JBMR Plus. 2020