院長ブログ・整形外科コラム

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整形外科コラム

2022年8月14日

足首の外側が腫れることはありますか?

こんにちは。

 

足関節(足首の関節)の外側が腫れていれば、滑液包炎という病気かもしれません。

滑液包は、関節周囲で皮膚、腱、靭帯と骨が接する部位に存在し、袋状の構造をしています。

袋の内部は滑膜という組織で覆われていて、関節液と同じ成分の滑液が(通常は少ない量です)溜まっています。

滑液包は骨と関節周囲の筋肉、腱、皮膚との摩擦を減らす役割をしています。

 

その滑液包に過剰な摩擦や刺激が加わると炎症が生じ、滑液の分泌量が多くなり、滑液包の中に多量の滑液が溜まるようになります。

また炎症が続くと滑液包そのものが分厚くなります。

そういった状態を滑液包炎と呼んでいます。

 

正座や横座りなどの座位によって足首の滑液包に刺激が加わりやすく、何度も刺激が加わり続けると炎症が生じ、滑液包炎を発症します。

足関節にはいくつか滑液包が存在していますが、滑液包炎を発症しやすいのは足関節の外側の滑液包です(図)。

症状はいつの間にか足首が腫れていて気付くことが多いです。

 

(写真はYK Yoon et al. Clin Orthop Surg. 2022 ; 14(2): 289–296.より画像を引用しています。)

 

写真のように足首の外側に腫れが生じます。

足関節の腫れ以外に痛みを伴うこともあります。

また、細菌の感染が原因で生じた腫瘤は早急に治療が必要ですが、その場合は写真よりも皮膚が赤くなり、触ると熱感を伴うことが多いです。

 

治療は、感染ではなく腫れのみの症状の場合、特に腫れが気にならなければそのまま様子見ても構いません。

腫れが気になる時、あるいは痛みを伴う状態であれば針で腫れている部分を刺して(穿刺)、内部の滑液を吸引します。

針を抜いた後に内部に滑液が残っている場合には、外部から腫れた部分を手で圧迫して残った滑液を針を刺してできた穴から排出するようにします。

穿刺後にもかかわらず反対側の足首と比較すると腫れが残っているように見えることもありますが、分厚くなった滑液包を腫瘤のように感じることが原因です。

 

穿刺は有効な治療方法ですが複数回穿刺しても再燃する場合には、穿刺後に滑液包内にステロイド薬の注入を行ったり、滑液包内に滑液が溜まりにくくするために包帯などで圧迫します。

頻度は多くないですがこのような治療を行っても改善しない場合は肥厚した滑液包を切除する手術を行うこともあります。

 

また、滑液包炎の再燃を防ぐためには、足首に刺激を加えないことも重要です。

 

正座や横座りなど座り方によっては長時間同じ姿勢でいると無意識のうちに足首の外側に刺激が加わり続けることになり、滑液包炎の原因となっている可能性があります。

特に腫れている場所の皮膚が分厚くなっている場合にはその部位に負担がかかっていることが多く、足首に負担のかかるような生活習慣を改善することが重要です。

 

足首の周囲の腫れが出現した時は一度整形外科を受診してください。

滑液包炎であれば記載した通り早急な治療は不要ですが、感染を伴う場合は治療が必要です。

また、そもそも腫れの原因が滑液包炎ではなく軟部腫瘍(筋肉や脂肪から生じた腫瘍)のこともあり医師による診断が重要です。

 



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